Vol.2

世の中には手を差し伸べてくれる人がいっぱいいる

Sさん(通信サービス会社勤務)

今回のサポステストーリーの主役は、爽やかな笑顔のSさん(26歳)。
大学を中退した数カ月後にサポステを訪れたところから始まり、サポステでの取組みや就活を経て現在(サポステ卒業後1年)に至るまでの道のりを率直に語ってくださいました。

「学歴は就職するためのもの、という考えがあった」というSさん。「勉強していたのに、結局大学へ行けないというコンプレックスを感じる一方、中退となると最終学歴が高卒となることが、大きな葛藤でした。すごく行きたかった大学ではなかったけど、複雑な気持ちでした。」と言います。

現在、営業職として活躍するSさんは、順調な歩みと言えない時もありましたが、サポステでの体験を振り返っていま感じることや、就活に悩んでいたり社会に出る一歩を躊躇している方たちに向けたメッセージなど伺いました。そこには、悩みながらも自分のペースで着実に歩んできた等身大の物語りがありました。
  - 2015/ 9/18 、とよなか若者サポートステーション(サポステ)にて
     聴き手:白砂明子(キャリアブリッジ統括チーフ)

 

とりあえずの始まりから

― 今日はお越しいただき、ありがとうございます。
 Sさんがサポステを卒業されてから、もう1年かな?
久々に元気な姿を見れてうれしいです。

よろしくお願いします。

― 改めて、サポステに相談に来たきっかけから聞かせていただけますか?

大学を途中で辞めた頃、どうしていいかわからないけど、とりあえず動かなあかんのかな……と思って、市の相談とかいろいろ受けていた時期がありました。……まあ正直、自分でもそんなに調べてなかったんですけど、親にこんなんあるよと言われるままに「行動してみようかな」と思ったのがきっかけですね。

― お母さんが来てくださってから4ヶ月ほど時間が空いてるんですが、その間、何か自分の中で動くものはありましたか?

その間、他のところにも相談に行ってたと思うんですけど、途中で行かなくなってしまって……。
正直、居心地悪くて何かしてないとあかんかなあと(笑)。で、わりと家からも近かったので行ってみるかと。

― 最初に何回か、サポステのセミナーや集合研修に参加していた頃はどんな感じでしたか?

そうですね…… まあ、ぶっちゃけて言うと、色々教えてもらうことも、こんなことぐらい出来る、みたいな感じはありましたね(笑)。

― ぶっちゃけていただき、ありがとうございます(笑)。まあ、そんな始まりではありつつ、続けて来ていたというのはどんな感じだったんでしょう。

例えばパソコンも改めて教えてもらうというのも為になるな、というところもあったんで、続けていました。
あと、自分と似たような状態の人……例えば、何かと理由があって、社会にちょっと出ていけなかったりとか、そういう人が結構いるんだな、と思っていましたね。仲間意識ではないですけど、ああ、同じ人がいるんだ、みたいな。

― しばらく何もしないという生活から、週1回のプログラムの後に、3ヶ月の集中プログラム(※後述)に参加したんですよね。週5日間、朝から夕方までサポステに通うというプログラムは、Sさんにとってはどうでしたか?抵抗はなかったですか?行きたくないなあ、とか(笑)。

まあ、「学校みたいで、久し振りやな、この感覚」ぐらいでしたね。別にしんどいとかはなかったですね。

― 同年代の男女の参加者が10人いましたが、参加者同士の関係性はどうでしたか?それぞれに苦労して、このサポステに辿り着いた方たちだったと思うんですが。そんな話はしました?

あの当時は、みんなお互いに踏み込まないようにしていた感じですね……卒業してからは話しますけど(笑)。
卒業してからも、一部の人とは今も繋がってます。LINEでグループ作ったりして、たまに遊びに行ったりご飯食べに行ったりとか。仕事の話もしますね。

      

― 3ヶ月の時間を共に過ごしたというのも影響しているのでしょうか。

それもありますし、境遇が似てる感じでしたね。社会から孤立していた時期があったんで、ちょっと人間関係が絶たれていた人もいるんですよね。それで余計に繫がりが強くなったのかな。

― そういう時期に3ヶ月の集中プログラムでみんなと過ごして、濃い関係を築けたのでしょうか。……まあ、3ヶ月プログラム自体も濃いですよね(笑)。プログラムのなかにある合宿の時の思い出はなにかありますか?

合宿では作業があったんですけど、そこで関わった製材所の方たちは本当によくしてくださって、最後泣いてはったぐらいで……。あれは素直に嬉しかったですね。すごい思ってくれてるんや、と。そういうのはありましたね。

― 最初来た時と4泊5日の合宿プログラムを終えた時の表情が違っていて、それを感じて泣いてくれたんですよね。関わってくれる方たちも、参加者のみんなと初めて会うんだけれども、思い入れがあってとても可愛がってくださるし、一緒になって感動してくれたりで、泣いてるんですよね(笑)。……それは憶えてるんだ。

はい、憶えてますね。


「好きなことをしてみたら」の一言で動き出す

― 合宿が終わってからボランティアと職場体験実習に行きましたよね。そのときはどんな感じでしたか?

最初は作業系の実習でしたね。アルバイトは過去したことがあったんですが、久し振りに仕事の現場に出たという感じでした。やれるな、という感覚もありましたし、会社の役にたってる感じもありましたね。

― 実習先からウチで働きませんか、と声をかけていただいたんですよね。就活に入るということでお断りしたんですけど……。でも、そんなふうに評価されたということは、かなり実習中も頑張ったんだなと思ったんですが、やってみて思ったことはありましたか?イヤだったことでもいいんですけど。   

自分で考えたり動いたりできる仕事がしたいな、と改めて思いましたね。

― 自分のやりたいことがはっきり見えてきた感じも含めて、だんだん就活や仕事のイメージをすりあわせていって、3ヶ月の集中プログラムが終わり、いよいよ就活という段階で、やっぱり大学に戻ろうかな、という時期がありましたよね。
当時はサポートしている私たちスタッフもいろいろ考えていたんですが、Sさんの心境としてはどんな感じだったんでしょうか。   

いろいろと情報収集していて、大卒じゃないと厳しそうな状況を見ていて、やっぱり大学へ行ったほうがいいのかな、と揺らぎはしましたね。

―  Sさんが目指している、いわゆるオフィスワークとか自分で考えて動ける仕事というのが、求人でみると大卒以上となっているものが結構あるんですよね。その時、私の方では「大学に戻るという選択肢を残しつつ、一度は就活にチャレンジしてみませんか」というアドバイスをさせていただいたように思います。
その頃の、他のスタッフ含めて何かやりとりで記憶に残っているものはありますか?

国際的なことに興味があったのですが、国際協力に関する仕事をしていたスタッフがいることを耳にしたので、僕の方から個人的に相談に行きました。そのとき、その方に「好きなことしてみたら」みたいなことを言われたんです。
そこで気持ちがラクになったというか、踏ん切りが付きました。

―  そのあたりから就活をすごく頑張ってましたよね。今の会社に入るまで3-4ヶ月あったかと思います。心理担当のスタッフから就活担当スタッフの児玉にバトンタッチしたんですが、児玉とは、相当つめて面談を入れていたように思います。たくさん応募して、不採用というのも何社かあるんですよね。その当時のことは覚えていますか?  

そうですね。かなりいい印象を残せて、面接のときもいい感じになって、これはいけたやろ!と思っていたところから落とされた時は、かなりドーンとへこみました。

―  そんな時は、どんなふうに立てなおしたんですか?  

まあ、正直あきらめようかなと揺らいだ時は一瞬ありましたね。でもここまでやっているし、児玉さんは本当に良くしてくれたんで申し訳ないし、それやったら、もうとことんやったろう、みたいな。

―  途中から吹っ切れた、みたいな感じですか?

そうですね。児玉さん、本当に心配してくれてメールくれるぐらいだったんですよ。期待に応えないと、ではないですけど、なんとかしたいな、と思って。

―  そんなふうに落ち込んだ気持ちを立て直していたんですね。
  このサポステに来たきっかけはお母さんでしたね。大学を辞めてから心配されていたかと思うんですが……。

親にはあまり話はしなかったですね。今日面接あるんで、ぐらいだったんで。

―  就活の段階では、もう自分でやるという感じで進めていったんですね。当時はオフィスワークにこだわっていたというか、元々こんな仕事がしたいというのが強かったと思うんですが、就活しているうちに、目指す職種が変わっていったとか、そういうことはありましたか?

最初からそういうところを狙っていたというのもあるんですけど、やっぱり現実的に考えて一番入りやすい職種を考えたら営業かな、と。そこは割りきらないといけないので。

― もともとはどういう職種を受けていたんですか?

始めは事務系ではないですけど、そこまで深くない技術職、という感じでしたね。

― 現実的に募集も結構でているし、ある意味学歴というより実力で勝負できる営業職に シフトチェンジしていったんですね。


仕事の大変さを、どう切り抜けるか

ー その後、2014年6月に派遣で決まったんですよね。正社員にこだわっていたと思うんですが、派遣でもいいかなと思ったのは、どんな気持ちからでしょうか。

最初から正社員になると、中途採用ということもあって現実的に厳しいかなと。

ー できるところから、という感じですね。入社から約1年経った今はどのような働き方をしていますか?

今は契約社員として働いています。

ー いまは、通信サービスの営業をされていますよね。最初の頃はどんな感じで働いていましたか?

最初は本当に右も左もわからない状態でした。通信サービスに関心のある、個人や法人のお客さまを訪問して加入してもらうという仕事なんですが、始めはかなりオドオドしていたと思うんです。でも僕は本当に周りに恵まれていて、上司から社会人は何かという所を一から教えてくださったりと、すごくフォローしていただきました。今でもそれは変わらず、マナーや職場関係などを気遣ってくださいます。

ー 会社で怒られたことはありますか?

営業と言うと厳しそうなイメージがあるんですが、怒られたりはないですね。周りを見ていても怒ってるところを見たことがありません。昔は厳しかったという話は聞いているんですけど、上司や部長の方で会社を変えた、みたいな話を聞いたりもしました。時期的にすごくいい時期に入ったね、とは言われましたね。業界的にも一番良心的な会社だったらしくて、環境的にも恵まれたと思います。

ー 営業の仕事って大変そうに思いますが、そのあたりはいかがでしょう。

仕事に慣れてきて、クレームにもどんどん対応しなくては行けなくなってきた頃、何故かそういうことは立て続けに起きたりして、しんどかった時期はありましたね。大阪だと、結構ドギツイ人も多いので……。

ー 精神的に結構キツイですよね。

辛かった時は確かにありますね。

ー そういう時はどうやって乗り越えていくんですか?

とにかく、上司に報告して「どうしたらいいですか」と聞いたり、いろんな部署の人に助けてもらっています。

ー 辛い時期もあったけど、会社の人に助けてもらいながらSさん自身も成長していったと思うのですが、自分がここが変わったな、成長したなと思う点はどんなところですか?

最初のうちは、わからないことや不測の事態が起きると、ドギマギしたりオロオロしていたこともありました。でも、今ではある程度ひとりで解決できるようになったかなと思います。

ー 自分で考えて自分で動けるようになったということですね。


世の中には助けてくれる人がいっぱいいる

ー 2年前の自分に対して、どんな言葉をかけてあげたいですか?「何かやらないと始まらないよね」と思ってサポステに来て当時のSさんに向けて、今のSさんから。

自分で動いてみたら、助けてもらえる。思っていたほど世の中は厳しくないというか、いい人も助けてくれる人もいるので、動いてみることが大事かなと思います。人のことを決めつけないで。自暴自棄にならないで。と。

ー 今の言葉は心に沁みました。
自暴自棄になっている姿は、私たちにはあまり見せなかったと思うけど、本当は自分自身のなかで、いろいろ悩んだり苦しんだりしていたのではないか……という風に考えています。周りの人が助けてくれた、ということはあるのだけど、自分でも周りにちゃんと助けを求めながら乗り越えてきたんだなと、本当に感慨深く思います。

 最初の頃はちょっと尖っていて、私から見て人を信用できない雰囲気を感じていました。そんなSさんが、児玉との関係もそうですし、服部とか、今の上司の方との関係もそうでしょうが、人に頼っていいんだと思えるようになった変化、心境って、どんな感じでしたか。

元々けっこう心配性なところがあるので、わからないところは潰していきたい、訊きたいということもありますが、親身にしてくださったので信頼していいんだというふうに思っています。

ー 元々そういうタイプだったが、訊く人が周りに少なかった。だけど、周りに頼れる人がでてきて、訊いてもいい、相談してもいいんだというところから実際行動して、そういう関係性を作ってきたという感じでしょうか。

そうですね。

  ー それはすごい成長だと思います。私もすごくうれしい。
お母さんは相当心配されていましたが、メッセージとして伝えたいことはありますか?

僕も辛かったけど、親にもいろいろあったので、そのしんどい時期にかなり負担をかけた自覚はすごくあります。きつい事を言いつつ、申し訳ないと思っていました。それがもっと自己嫌悪に陥る部分もあり、申し訳なかったな、子供っぽかったなと思います。親だけでなく、兄弟全員に対しても、ですが。

ー いつか直接伝えてあげるとご家族の方もうれしいのではないでしょうか。
さいごに、就職活動に悩んでいたり、なかなか社会へ出るのに踏み出せない人たちが、サポステに相談に来てくれていますが、彼らにメッセージはありますか?

自分に向けた言葉と繰り返しになりますが、世の中には助けてくれる人や、手を差し伸べてくれる人がいっぱいいるので、そういう人たちに頼るのもいいし、親もそうです。そういう人をもっと頼って。気楽に、ではないですが、気負わずに頑張ってほしいと思います。

ー 今日はひとまわり大きくなったSさんに会えて、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

キャリアブリッジスタッフよりひとこと

 サポステに来て、初めてじっくりと向き合ったのがS君でした。集中訓練受講中は少し影を感じ、斜に構えている印象がありましたが、面談を通してポテンシャルの高さを感じました。
 就活では時に厳しさを感じることもあったかもしれませんが、頑張りを見せてくれました。ある時から表情も変わり、元々の元気な自分を取り戻した感じがしました。それからは少しずつ好転していき、就職決定。本当に嬉しかったです。
 採用してくださった企業様から「S君みたいな人、他にもいませんか?」とのお声掛けをいただいたことも嬉しかったですね。非常に高く評価していただき、S君自身も生き生きと仕事をしているようでした。S君が、働きだしてからサポステに電話をかけてきた時、スタッフの「誰かわからなかった。ものすごく応対が良かった」という言葉が印象に残っています。
 これからも学ぶべきことは多いと思いますが、働くことを通じてますますの成長を願っています。

『とよなか若者サポートステーション』キャリア支援担当:児玉

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